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三十四話 課外授業へ出発

Auteur: Tubling
last update Dernière mise à jour: 2025-06-21 22:41:30

瘴気というのはこの世界に巣食う邪の気配、それらが集まって魔物が具現化されている。

 ゲームでも戦闘に入る時は必ず瘴気が集まってきて魔物が大量発生するのだ。

 邪の気配は魔王がいる限り消える事はないので、世界を平和にするには魔王を倒すしかないんだけど、それがカリプソ先生から見つかったという事は完全体の魔王はもう誕生が近いという事かな……そこまで考えて、ふと思った。

 私はゲームが始まる少し前の世界に転生したのでは?と。

 もちろんジークを好きになったり私が聖魔法が使えたりというのはゲームにはなかった設定だけど、もしかしたらここからゲームの世界が始まっていくのかもしれない、なんて漠然とだけどそういう考えに至ったのだった。

 とにかく瘴気が入り込んでいるカリプソ先生を今まで以上に注視しておかないといけないわね。

 そんな風に気合を入れたものの、しばらくは穏やかに学園祭の準備が進み、特に何事もなく日常が過ぎていった。

 ジークは相変わらずカリプソ先生と一緒にいる事が多いし、噂も凄いものになっていたけれど、私はそれほど気にならなくなっている。

 自分の気持ちがハッキリした事もあるし、彼が公爵邸を訪ねてくれた時に私が抱えているものを半分こしようと言ってくれた事で、一人で頑張らなくていいんだと思うと本当に気持ちが軽くなったのだ。

 時々目が合うと「しっかり役目を果たしている」と言わんばかりにドヤ顔をしてくるのが、面白くて笑ってしまう。

 真面目で誠実な人なんだなと、日々好きが増しているような感じがする。

 でも穏やかに過ごしてばかりもいられないのが最終学年であり、王都の外に出て実戦を経験させる課外授業というものが待っている。

 担任としてももちろん付き添わなくてはならないし、この魔法学園の一大イベントでもあった。

 この課外授業をクリアする事で、初めて一人前として認定されるのだ。

 学園祭が始まる前に行われる行事で、数日後にその日は迫っていた。

 学園祭の準備も大変なのに課外授業まであるなんて、最終学年の生徒たちは本当に大変よね……しっかり生徒を守ってあげなくては。

 私はいつの間にか教師としての自分を受け入れていて、今となっては生徒たちを守る使命に燃えている、一人の熱血先生と化していたのだった。

 ~・~・~・~・

 課外授業の日を迎え、私は朝からバタバタと対
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